ホテル・マネジャー (カナダ2回目 #25)
或る夜、隣の部屋に、何度も何度も人が出入りし、
その度に、ノックの音、ドアの閉まる音、迎える声、送り出す声、
それで、深夜に目を覚ましてしまい、
仕方ない、日本からのmailを処理しようと、1時間半ほど仕事をした。
それが、金曜、土曜の2日間も続いた。
2日目、もう耐えられない、そう思い深夜2時に、フロントに電話をした。
誰かがその部屋に行き、一言、二言、注意をする声が聞こえた。
結構、大きな声で、叱っている。
すぐに、静かになり眠れる事が出来たが、騒いでいたのは若者のようだ。
若い人は、やはり、どうしても傍若無人だ・・・
アメリカでも同じだが、街中のホテルは、週末、利用客が少なくなる、
その対策として、ウィークエンド・ディスカウントをするホテルが多く、
その安さを、若者が利用するケースが多々あるのだ。
とある日の夕方、ロビーでバッタリ、このホテルのマネージャーと出くわした。
彼は、以前、部屋のヒーターが動かなくてフロントに電話した時、
部屋に来たマネージャーで、とても大きなお腹をしているのだが、
私の顔を見るなり、
「先日は、隣の部屋の騒音の件で、申し訳ない事をしました。」
と、丁寧に謝られた。
そこで、ウィークエンド・ディスカウントの事を聞いたら、やはり、
「そうです。 週末はお客が減るので、ディスカウントをしています。
でも、貴方の場合、宿泊期間が長いので、もっとディスカウントしています。」
「いや、ディスカウントをリクエストしてる訳では無いですよ。
ただ、参考の為に。」
「あの夜、貴方からのクレームを受けて、私が彼等の部屋に行きました。
若い連中達に、眠れない人が居ることが分からないのか、
ドアーの開閉も、ノックも、もっと静かにしなさい!と、言いました。
しばらく、ドアーの近くで立って見守っていましたが、
その後は、出入りも、騒音も、無かった筈です。」
「貴方が、あの声の主だったんですか! 私にも、聞こえましたよ。
私は、てっきり、彼等の親の1人かと思ってました。」
「そうですか。 確かに、2日連続で眠れなかった。
なので、最悪、このホテルから、違うホテルに替わろうと考えましたよ。
でも、貴方は立派だ。
他人の子供に、親のように注意するのは、
仕事とはいえ、なかなかと出来ないと思います。」
「サンキュー、Sir。」 と、ここで握手。
「何か、このホテルに対して、リクエストあれば、いつでも私に言って下さい。」
「ありがとう。
じゃあ・・・ あの、ソフト・ドリンクのサービス、
あれに、ビールも追加して貰えると、大変に、大変に、嬉しいのだが。」
「あはははは! 申し訳ないですが、それは出来ません。
もし、そうしたら、私が、いつも、飲んでしまう。
このお腹が、もっと大きくなってしまう!」
このマネージャーが居れば、このホテルは、大丈夫だな、そう感じた。